否定しないコミュニケーション
コミュニケーションのプロの方の話です。
よりよい人間関係を築くためのヒントに加え、身近な人とのコミュニケーションのあり方を考え直すきっかけになれば良いなと思ってシェアさせて頂きます
誰しも、部下や同僚、友人、家族などと「いい人間関係」をつくりたいと思っているでしょう
では「いい人間関係」をつくるには、具体的に何をすればいいか。
相手を「褒める」よりも、「肯定する」よりも、「否定しない」ことがもっとも効果的だという事です。
否定しない技術をいかすだけで人間関係が劇的に変化します。
とはいえ、ほとんどの人が「相手を否定するのはよくない」と理解しているのではないでしょうか。
人が誰かを否定するとき、多くは無自覚なんですよね。
頭ではわかっていても、無意識のうちに相手を否定してしまっています。
コミュニケーションのプロの方の話です。
よりよい人間関係を築くためのヒントに加え、身近な人とのコミュニケーションのあり方を考え直すきっかけになれば良いなと思ってシェアさせて頂きます
否定しないマインドをつくるためには、次の3つを意識した方がよいみたいです。
(1)「事実だから否定してもいい」という思考をしないこと、(2)「自分は正しい」という思考をしないこと、(3)「過剰な期待」をしないこと、です。
相手を否定しない技術のひとつは、「能動的に黙る」ことである。この行為によって、相手の意見や考えを引き出す事が出来ます。
なぜ相手を否定してしまうのか
多くの人は、「否定しないで受け入れることが大切」と頭ではわかっているのに、無意識のうちに相手を否定してしまいます。なぜでしょうか?
理由の一つは、「よかれと思って」という前提のもと、否定を正当化してしまっている事です。
私は中学3年生のとき、「将来は大企業の社長になりたい」という夢を親に伝えたところ、困った顔で「もう少し、普通のやつ、ないのか?」と言われました。
自分が大人になってみると、相手に悪意がないことはわかる。子どものために「よかれと思って」言ってくれたのだろう。だが、悪意がないからこそ厄介であるともいえるんですよね。
否定は何をもたらすか?
その後、留学先で出会った進学カウンセラーに夢を打ち明けたところ、カウンセラーは否定せず、「素晴らしい。どうしたらなれるか、一緒に考えよう」と言ってくれた。そう言われて初めて、夢を実現する方法をまったく考えていなかった自分に気づいたんです。
否定ばかりされると
「怒りが生まれる」「オープンに話せなくなる」「信頼関係が生まれにくくなる」「自己肯定感が低下し、自信を持てなくなる」
ということです。
逆に、自分の意見や考えを認めてもらえると、ポジティブな感情が生まれ、もっとコミュニケーションを取りたくなり、信頼関係が生まれて、自己肯定感と自信につながります。
そんなの当たり前だ、と思う人もいるでしょう。それでも私たちは、無意識のうちに相手を否定してしまっているんですね。
否定とは「何を言っても『でも』『だって』と否定すること」に限らない。
相手が話しているのをさえぎって話し出すことや、相手が意見を述べたときに「それもいいけどさ」と自分の意見を言ってしまうこと、別のことをしながら相手の話を聞くことも「否定」である。
否定しない」の具体例
相手を否定しないことでいい関係をつくれた事例を紹介ましょう。
あるベテランのワインソムリエが、お客様からこう言われました。「〇〇(ワインの銘柄)の赤ワインをいただけますか?」
実はその銘柄の赤ワインは存在しない。だがそれをそのまま伝えると、お客様に恥をかかせることになってしまう。
そこでソムリエは機転をきかせてこう言った。「〇〇で赤ワインが生産されていることをよくご存じですね。
しかし、残念ながら用意がありませんので、ほぼ同じ味わいの〇〇というワインではいかがでしょうか?」
否定しない「マインド」
3つの基本
1つめは、「事実だから否定してもいい」という思考をしないことです。
「前回もミスをした」「遅刻が多い」のが事実だとしても、部下を延々と責め続けていては、相手を追い詰めてしまうでしょう。
事実だからといって、何を言ってもいいわけではないんですよね。
「否定しているか、いないか」「言っていることが事実か否か」ではなく、「言われた相手がどう受け取るか」を想像することが重要である。
2つめは、「自分は正しい」という思考をしないことです。
世の中の大半のことには、明確な正解がない。
「自分なりの正解」を主張し続けるのではなく、意見の違いを理解・尊重して、相手と共有できる目的を見つけるようにしてみましょう。
そのうえでお互いが納得できる落としどころを探るべきだと思います。
3つめは、「過剰な期待」をしないことです。
人は、期待を裏切られると、相手を否定しがちです。
だが、人はほとんどの場合、わざと失敗しているわけではありません。
相手を責めたくなったら、まずは「その人はその人なりに精一杯やっている」と考えて気持ちをコントロールしてみましょう。
否定したくてもぐっとこらえて「じゃあ、どうすればできるのか?」を考えたほうが、ずっと生産的だ。
否定してくる人」への対処法
相手に否定されたときは、料理で使う「ざる」をイメージするといい。
ボウルのように相手の否定を全部受け取ると、気持ちが落ち込む。それよりも、穴だらけのざるをイメージして、相手の否定をザーっとこぼすといいです。
コツは「いる」情報と「いらない」情報を分別することだと思います。
否定の言葉や罵倒、叱責など、「いらない」情報は聞き流して、気づきや学びだけを今後に活かせばいい。
同時に、相手は「ざる」を持っていないということも理解しておきたい。「そんなの当たり前だろう! 仕事なんだから!」といったハッパのかけ方は、今や通用しない。「否定のハッパがけは相手をつぶしてしまうかもしれない」と肝に銘じよう。
否定しない「技術」
能動的に黙る
否定しない」ために大事なのは、言葉を返す前にブレーキを踏む、つまり能動的に黙ることです。
コミュニケーショントラブルの多くは、脊髄反射的に言葉を返すことで起こる。
否定したくなっても、一度冷静になってみましょう。
あるお菓子メーカーのマネジャーの事例を紹介します。
「自分が引っ張らないと仕事が回らない」と考えているマネジャーは、部下との面談でも自分ばかりがしゃべっていました。
そんなマネジャーが「能動的に黙る」を実践したところ、部下たちは自分の意見を話してくれるようになり、仕事がやりやすくなったという。
話を聞いてくれる相手には、誰もが喜んで話すのだ。
ポイントは、相手が話し終わるまで黙ったままでいることです。相手の言葉をさえぎる行為は立派な「否定」なんですね。
さらに、相手の話が落ち着いたら2秒ほど黙ることです。
話したい衝動を抑えていると、話が終わるやいなや、食い気味に言葉を発してしまうことがあるからです。
じっと気持ちを冷却してから、落ち着いて話そう。
相手の言葉を繰り返す
何かうまいことを言わなければ、有益なアドバイスを授けなければと考えるほど、「否定」の言葉が出てきてしまう――。これではすべて水の泡だ。
このような事態に陥らないようにするには、「相手の言葉をそのままナレーションする」のが有効です。
相手が言ったことを繰り返して、「~ということを考えているんだね」「~ということなんですね」と復唱すれば、相手は安心します。
「そうなんですよ。それに……」と、より詳しい話や、かみ砕いた説明を加えてくれることもあるだろう。
また、ゆっくり復唱すれば、会話のスピードをコントロールすることも可能です。
会話がゆっくり進むようになると、話の内容を精査でき、勢いで否定することのない、賢明な会話を展開できる。
「否定しない」とは、決して「すべてに対してYESと言わなければならない」という意味ではありません。
ときには相手の発言を否定したり、間違っていると指摘したりしなければならないこともあると思います。
その時は、相手の言ったことそのものだけを「承認する」ことから始めるようにしましょう。
「そうなんですね」と、まずは相手の思いや考えを受け止めます。
同意できないときには、別の選択肢を提示するのもひとつの手です。
たとえば、一緒に食事をする相手が「うなぎがいい」と言ってきたが、あなたはあっさりしたものが食べたいとします。
そんなときは、「うなぎか。それもいいね。ほかにも何か食べたいものある?」と、まずは相手の言葉を受け取ったあと、別の候補を挙げてもらうようにしましょう。
ここで相手から「〇〇さんは、何が食べたいんですか?」と聞かれたら、「おそばなんかどうかな?」と提案することができます。
そして「うなぎが好きなんだね。覚えておくよ。今度、ゆっくり時間を取って行こうね」と、相手の最初の考えをいったん保留にします。
これは、面談で部下から「異動を希望します」と言われたときにも使える手法です。
「それは困る!」と否定したくなる気持ちを抑えて、「異動ね。そういう考えを持っているんだね。覚えておくよ」と言うのが、ベターな回答だと思います。
尚一度発した発言は絶対に忘れず、「時を超えた承認」を行わなければなりません。
後日「この前、うなぎを食べたがっていたよね。今日、行く?」
「前回、異動したいと言っていたけれど、今はどう?」と言えば、相手は自分の考えを覚えていてくれたと感じ、うれしくなる事でしょう。
毎晩、セルフコーチングを行う
つい相手を否定してしまう人は、セルフコーチングの習慣をつけるのがおすすめです。
お風呂に入っているときや夜寝る前などに、自分自身と向き合う時間をつくるようにすることをおすすめします。
まずは、今日あった出来事を振り返っていきます。
今日はどんな一日だっただろう。
どんな感情が生まれては消えていっただろう……。
大切なのは「どうすればよかったんだろう」などと方法論に走らず、まずは事実情報だけを振り返ることです。
そのプロセスの中で、誰かを否定していたことに気づくかもしれません。
そんなときは、「どうすればよかったか」を考える前に、まず「自分が否定してしまったシーン」を客観的な事実だけに集中して、丁寧に振り返ってみます。そうすると、自分の「否定」という行為の中に「願い」や「意図」が隠されていることに気づき、あなたの否定のメカニズムが見えてくるはずです。
部下とのやり取りを例に挙げてみましょう。
来月プレゼンする広告プランについて話していたとき、あなたは部下の意見をさえぎって自分のアイデアを話し出したとします。
すると部下はヘソを曲げて、「もういいです!」と、自分のデスクに戻ってしまった――。
この場面を、以下の順番で振り返ってみます。
「何が起こったのか?」→「何はうまくいっていたのか?」→「何がうまくいかなかったのか?」→「相手を否定した? その場合、なぜ否定したのか?」
丁寧に振り返っていくと、否定の裏にある思いや意図に気づくことができます。
部下の案が実現不可能なものだったために、あなたは「期待を持たせるのはよくない」と考え、親切心からその旨を伝えたのかもしれません。
否定の裏にある思いが把握できると、「相手の意見を承認したうえで、別の言い回しで伝える」などと、よりよい対応の選択肢が見えてくると思います。
自分はすでに役割を果たしている」と考える
振り返りのセルフコーチングをすることで、ああすればよかった、こうすればよかったというネガティブな思考が湧いてくるかもしれません。
だがそんな方には「自分はそこにいるだけで、すでにほぼ役割を果たしている」というように思ってほしいです。
部下と面談するとき、上司が与えるべきものはアドバイスや説教ではなく、「相手が話をし、自分を内観するための『静かな時間』」です。
つまり上司は、そこにいて話を聞いているだけで、すでにその役割をほぼ果たしている。
「何かしないといけないのかな?」と思って、余計なことを話すと、役割を自ら放棄することになると言っていい。
自分はいるだけですでに役割を果たしている」。
この考え方は、否定しない人間関係において重要なものだと思います。